政治経済 メノツケドコロ(積極財政)

一介のサラリーマンが、世相、政治、社会への考えを綴ってます。

楽天会長の発言には、強欲な資本家の自己中心主義が表れている。

本日取り上げる記事はこちらです。

 

三木谷浩史氏「政府与党は課税強化を見直すべき 有能な人材が日本から出ていく」

 

というタイトルで、楽天グループ会長の三木谷氏の持論を述べたものです。

 

政府が、年間所得が30億円を超える富裕層対象に所得税増税を検討していることを受け、

反対の論陣を張っているようです。

 

三木谷氏はその理由として

配当や株式の値上がり益であるキャピタルゲインに課税することは二重課税であること。

また、有望な人材が金融資産とともに日本国外へ流出してしまうことを挙げています。

 

三木谷氏は逆に、最高所得税率を引き下げるべきだと主張しています。

 

さて、こういう記事が流れてくるといつも思うのは、資本家の今だけ金だけ自分だけという

欲望はもはや誰も止めることができないのだなということです。

 

断言しますが、彼のいうように富めるものはもっと富んで良いなどという主張は

日本を回復不可能なまでに叩き落とす可能性があります。

 

今までの政治のように富裕層ばかりに優遇をし、庶民との格差を拡大し続けた

結果がこの30年間の日本の停滞の大きな要因になっているのです。

 

この30年間、自民党民主党財務省の言いなりとなり緊縮財政と構造改革に邁進していきました。

バブル崩壊後、厳しい経済状況の中で政府が支出を絞ることで、世の中にお金が出回らなくなった。

消費者は将来不安から節約に励むようになり、そのことで企業は売上が伸び悩むようになった。

売上の目処が立たないのに企業は投資するわけにもいかず、設備投資も減少し内部留保

拡大していった。

 

そんな中で政府は労働者派遣法を改正し、対象業種を広げた。

不景気でも利益を確保するために企業は非正規の雇用を拡大。

正規雇用者という、全労働者の今や4割にも達する 身分 がつくられてしまった。

よって益々お金が回らず、デフレスパイラルが繰り返されるようになった。

 

そこに更に構造改革の波が押し寄せる。

小さな政府を志向し、自治体への交付金を削減していくことにより

職員の数が減少し、非正規の公務員が激増した。

 

官から民へのスローガンの元、

鉄道や郵便サービスを民営化、今では水道すら民営となった自治体まで出てきた。

 

そして、企業統治改革だと言って

株主の利益を最大化させるために、会社法を整備していった。

要は、株主への配当金を最大限出させ、かつ株価を何としても維持していくために

長期的な目線での投資や人材育成をできない構造にしていった。

 

ここまで、失われた30年間をざっくりまとめてみましたがこれ全て一言で言えば

格差を拡大する政策だったということです。

 

デフレという不景気を放置する。デフレとは物の値段が安くなること。

つまり資産を元々持っている人間の資産価値は、何もしなくても勝手に増えていったということなんです。

持てるものと持たざるものの格差を不景気がまず広げました。

 

その上、非正規雇用という身分を作るとどうなるか。

細切れの労働で能力向上の機会も得にくく、場合によっては社会保険料や賞与がない場合もあり低賃金。

結婚して子供を持ったとしても、十分に教育を受けさせることが難しい。

貧困の再生産、これも格差拡大の一つです。

 

そして公的サービスの民営化。

そもそも公的サービスはを民営化するとは、みんなのものだった財産を

特定の企業の金儲けの道具にするということ。

 

庶民が生きていくための根幹となるサービスを民営化するということは、

足元を見た企業は、利益のために料金を際限なく上げていく可能性があるということです。

 

現に地方の鉄道も含めて、値上げするかサービスをなくすしかないなんてニュースがあちこちで聞かれるようになった。

庶民の生活の基盤を不安定にし、富裕層との差を拡大したといいうこと。

 

そして極め付けが企業統治改革。

これにより、上場企業は人件費をほとんど増やさなくなったのに

株主配当だけは爆増してしまった。

持たざる労働者への分配率を引き下げて、株という資産を持てる人間へと利益を集中していく。

これも格差の拡大だった。

 

このように30年間富裕層は甘やかされぬくぬくと資産を積み上げることができた。

 

その恩恵を思う存分享受してきたであろう三木谷氏は、更に減税という利益を要求している。

恥という概念はないのだろう。

 

 

そもそも富めるものばかりにお金が集中することは、それだけで不景気を助長する。

1000万円を一人が持っていても、使う金額なんて高が知れている。

だが、それを三人に分配してみると良い。

 

今の日本の物価水準であれば、その三人は大半を生活費に使うことになる。

つまり経済を回してくれるのだ。

一人の金持ちがいるからと言って、経済にいいことがあるのかというと思いの外そうではないことがわかるだろう。

一人が多く持つより満遍なくみんな持ってる経済の方が成長するのだ。

トリクルダウンなんて完全な嘘である。

 

記事の中で、彼は高い所得税率を適用すること自体を、経済に貢献した個人への懲罰的な課税であり社会主義的であると批判している。

 

だが、市場原理主義だけでなく社会主義的に政治を行い、格差を拡大させないことで経済がより活発になる可能性が高い。

 

また、格差の拡大というのはそれ以外にもあまりにデメリットが大きすぎるのだ。

 

格差は拡大するだけではなくいずれ固定化するようになる。

そうなると、まともに社会のレールに沿って生きることにメリットを感じない人たちが出てきてしまう。

 

このまま頑張っても、株主の駒として使い倒される。

一生家族も子供も持てず、働かされて死んでいく。

 

自暴自棄となり、社会に牙を向く人たちだって増えるだろう。

 

日本の誇る治安の良さが、失われてしまうのだ。

 

 

さて、ここまでは格差拡大を容認するべきでない理由をある程度客観的な理由から述べてきた。

だが、格差拡大は道徳的にも許すべきではない。

 

彼のいうように、経済に大きく貢献した人間はいくらでも儲けていいというのは傲慢でしかない。

その人間は金儲けをする段階で、誰か他の人間の手を借りなかったのか。

三木谷氏自身、楽天の末端の社員の協力があるから今の地位があるのではないのか。

 

何より、自分が儲けることができたのは

日本という社会に暮らす多くの人々が、それぞれ自分の仕事を全うし社会のインフラを整えてくれたからじゃないのか。

 

食料を作る他の人たちがいるからこそ、あなたも生きていられるんじゃないのか。自給自足しながら楽天という会社を経営できたのか。

 

勝者総取りが当たり前などという考え方は、「一人で大きくなった気になってるとっちゃん坊や」

 

中学生までで卒業するべき浅はかな考え方なのです。

 

 

そこへ来て、彼のいう最高所得税率の引き下げ。これは富裕層が得をするだけじゃない。格差拡大政策です。

 

例えば会社の経営者。所得税率が下がったならば、従業員に回す賃金を少なくしてでも自分の報酬を上げることが合理的になる。なぜなら手残りが増えていくのだ。

所得税率が高ければ、それはあるいは従業員への福利厚生に回る可能性もある。

 

それに、上場企業であればもし金融所得への税率が引き下げられた場合

どうなるでしょうか。

ただでさえ伸びない賃金を更に節約し、配当に回す動きが加速するでしょう。

 

もしくは自社株を購入するなどの方策で、経営者の持つ株の値段を釣り上げ資産を増やすことも益々活発になることでしょう。

 

所得税率が下がれば、取れば取っただけ自分のものになるのだから当然そうなる。

 

この30年間の失敗、そして苦しんでいる庶民のことなど何も考えちゃいない財界人の代表のような人物が楽天の会長であるということです。

 

我々庶民も、このような富裕層の意見に負けず、声をあげ投票でその意思を示していかなければなりません。

 

一緒に頑張って参りましょう。