政治経済 メノツケドコロ(積極財政)

一介のサラリーマンが、世相、政治、社会への考えを綴ってます。

静岡県保育士の事件は、政府のこれまでの在り方を見直すきっかけとすべきだ!

本日取り上げますのは、

静岡県裾野市にて、保育園で働いていた保育士の女性三名が、園児への暴行容疑で逮捕された事件です。

 

 

www3.nhk.or.jp

 

 

加害者らは、園児への暴行や暴言、宙吊りにするなどの虐待を繰り返していたとのことです。

 

こうした事件を受け、SNSでは加害者を激しく非難する声が相次いでいます。

子供が嫌いなのであればなぜこの仕事についたのか、仕事にしている以上待遇に文句を言うな選んだのは自分だろ。なんて恐ろしい人間なんだ 等々。

 

私も、この事件の加害者を擁護するつもりは全くなく、罪を犯したのであればもちろん然るべき処置を受けるべきであろうと考えています。

 

ただこの事件、加害者が異常だったで済ませていいのでしょうか。

私は、これをきっかけに今まで日本がいかに労働者を大切にしてこなかったかを見直していくべきなんじゃないかと思うのです。

 

加藤厚生労働大臣は、この事件を受け、全国の自治体や保育現場に注意喚起と実態調査を行うと発表しました。

もちろんこの措置は必要でしょう。しかし、国も自らを顧みる必要があるはずです。

 

ご存知の通り、保育士の労働条件は度々問題に上がるほどにきついものです。

厚生労働省のデータによりますと、

全職種での平均賃金は500万円となっているのに対し、保育士の場合は360万円程度と大きく

平均よりも賃金が低いと言うことがわかります。

 



それに加えて、こちらのグラフをご覧ください。

 

こちらは、平成30年に東京都が、保育士の離職防止や就職支援に役立てるために

保育士の有資格者にさまざまな調査を行った中でのものです。

 

現在の職場への改善希望事項として

 

給与、賞与等の改善が 65.7%

職員数の増員 50.1%

ジム、雑務の軽減 49%

未消化休暇の改善 36.5%

勤務シフトの改善 36.5%

 

トップから五番目までの事項の全てが、労働環境、それも労働者にもっとお金を

かけて改善する必要のあることが並んでいるのです。

事務の軽減、休暇の改善、シフトの改善、どれも企業が人材採用に力を入れ、

保育士を増やしたり定着させるために人件費にお金を使わなければ改善の難しい問題なのです。

 

では国は、保育園運営会社側が人件費をしっかり使えるように支援しているのでしょうか。

実は、全く逆で 従業員の賃金が安く据え置かれることを容認するような政策ばかり行なってきていたのです。

 

バブル崩壊後の不況、女性の社会進出も増えた頃、共働き世帯の増加により

待機児童が社会問題となりました。

その為2000年に、政府は営利企業などにも認可保育園の設置を認めることとし

解決を図ったのです。それ以前には、認可保育園は自治体や社会福祉法人にしか設置が認められていませんでした。

その際に、政府から保育園に渡す委託費の使い道の規制緩和を行なったのです。

 

説明しますと、

保育園というのは、大きく二つの収入源があります。

一つは保育料。これは利用者から直接いただくのではなく、受け入れた園児の人数によって地方自治体から受け取るというものです。単価も決まっているので園の裁量は少ないと言えます。

 

もう一つは委託費です。政府が公定価格として、保育園を運営するにあたって必要になると定めた金額を園児の数で配分しているものです。当然公定価格なので自由に決めることはできません

 

こちらの委託費、民間企業の参入を促すまでは使い道に制限がかけられており、

人件費として受け取る分は人件費に回すことがきまられていました。

 

しかしそれでは民間企業が自分の手元にある資金を自由に使えず、参入を促せないと考え、委託費を弾力運用できるようにしたのです。

人件費や事業費、管理費相互の流用や、運営する他の保育園や保育事業に流用することも認められました。

これはつまり、人件費に本来必ずいくはずだったお金が、必ずしもそうではなくなったということなわけです。

 

さらにその後も、流用できる金額をより多額まで認める改正や、介護施設への委託費の流用を認めるなど弾力運用の名目で、人件費に必ずしも資金を割り振らなくて良い状況がどんどん作られていきました。

第二次安倍政権の元では、株主配当に回すことまで認められました。

 

民間の参入障壁をドリルで打ち壊す、自民党政権の面目躍如といったところでしょう。

 

しかし結果として、保育の現場で働く人々の賃金はどうなってしまったでしょうか。

 

もともと、委託費については、

その金額の8割を人件費に掛かると考えて支給していました。

それが、規制の緩和により8割そのまま人件費に使わなくても良いということになったと。

 

 

toyokeizai.net

こちらの記事によりますと、保育園を運営する株式会社の場合、人件費は全体の5割程度まで

削られてしまっているとのことです。8割だったものが5割しか支給されなくなる。

 

営利企業が参入するなら、削れるところから削って利益を出すわけですから、

断じて安易な規制の緩和などするべきではなかったのです。

 

実際、低賃金なだけでなく非正規雇用の保育士が4割になるなど身分も不安定になっている。

 

労働環境の改善などできるわけがない。

 

国が制度設計を間違えているわけです。

 

本当であれば国は、委託費の金額を潤沢にあげて、その分人件費や設備投資に使えるように

制限をかけるべきだったのです。

労働者の待遇、職場環境の改善のためにお金と制度を運用するべきだった。

 

それなのに企業経営者に反発されるのが怖いから、働く人たちを守るという責任を放棄したわけです。

 

自民党政府に言いたい。

お前たちは、労働者を大切にしていない。むしろ疲弊している労働者にさらに冷や水を浴びせるようなことばかりしている。

なのに、一旦事件が起こったら、それまでの自分達の不作為による影響を大々的に国民の前で反省することもせず、現場への圧力を強めるのか。

 

虐待は悪だ。

それは当然だ。

 

だが国家権力が労働者を虐待するのは、お咎めなしなのか。そんな国でいいのか。

 

国民の皆さんには

今回の加害者を非難するだけでなく、社会がどう変わるべきか。どうあるべきか。

 

そんなことを考えるきっかけにしていただきたい。

 

庶民の手で、庶民を大切にできる政治を、少しずつ取り戻していきましょう!

 

 

今回は、以下のリンクの記事などを参考にし記載いたしました。

ありがとうございました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d1a5f731b1e0c3274c3f4d7997a159fd450c5eec
https://www.g-asuka.co.jp/job-info/column/faq-haken-009.html
https://toyokeizai.net/articles/-/601800?page=3
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shikaku/30hoikushichousa.files/430chosakekkashosai.pdf
https://toyokeizai.net/articles/-/356874?page=3